恋を届けるサンタクロースvol.1~沙希~
「いいから教えて」
「教えたってどうせ叶いっこないし」
「そう決めつけないでよ」

 そう言ってサンタクロースは相変わらず笑っている。

 変な人。ますますやばそう。機嫌を損ねて豹変されても怖いから、さっさと答えてさよならしよう。

 それに、どうせ欲しいものなんてもらえっこないんだから。

 あたしは大きく息を吸って彼を見上げた。

「あたしが欲しいのは、時間」
「時間?」

 サンタクロースの眉がまた寄った。

「そう。一週間前に戻して欲しい」
「どうして一週間前なのかな?」
「彼氏とケンカしたの!」
「ああ」

 サンタクロースがひとりでうなずいている。

「いくらサンタさんでも、時間なんて戻せるはずないでしょ」

 でも、あたしはそう言いながらも、戻ったらいいのにって思ってる。
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