好きって言っちゃえ
「どの人よ?」
舞は思いっきり興味本位で航に尋ねる。
「え?言うんですか?」
「いいじゃない、言ってくれたって」
「まぁいいですけど。ええ〜っと、あ、あの子。ほら、ピンクのワンピースの」
航は、二つ向こうのテーブルに座って、微笑みながら隣の男性と話をしている桃子を小さく指さした。
「あ、あの子、どっかで見たような…」
お見合い写真を取りに来た時と同じワンピースを着ている桃子を見て、舞は記憶を辿ってみる。
「え?知ってる人ですか?知ってるんだったら、紹介してくださいよ」
身を乗り出す航を見て、舞の記憶が蘇る前に美雪が口をはさんだ。
「こういう時は男らしく自分で頑張んなきゃ。この人に頼ったって、ロクな事ないわよ」
美雪はガシッと舞の肩を掴んだ。
「ちょっと、どういう意味よっ」
「そうですね。よしっ!思いきってちょっと行ってきます」
航は今持ってきた皿を再び持って、桃子と話している男性と反対側の空いてる席に座り、二人の会話に割り込んだ。
「へ〜。西尾くんって意外と行動派なんだね」
その様子を眺めながら舞が美雪に呟いた。
「…」
「ん?」
返事がないので舞が美雪を見上げると、美雪は桃子の方を瞬きもせずに見据えている。
「美雪?」
「決めた」
「何を?」
「私、西尾くん狙いにする」
「は?美雪は今日エントリーしてないんでしょ?」
「今後の事よ」
「今後?」
「ああ、どうか、あの子と西尾くんがうまくいきませんように…」
と手を合わせて拝む美雪。
「それって、主催側の言うこと?…あっ!思い出したっ」
「ん?」
「あの子、こないだお見合い写真撮りに来た子だ」
「って、ことは、彼女も本気の参戦か…。ああ、神様どうか西尾くんが振られますように」
合わせた手に力を込める美雪。