好きって言っちゃえ
そこに、パスタ2種類を山盛りに持った光俊が席に戻って来た。
「あれ?片岡さん、合掌しちゃって、片岡さんも食べるつもりっすか」
「あ、ううんっ」
慌てて手を離す美雪。
「ちょっと注ぎすぎじゃない?」
こぼれそうなパスタを見て舞が怪訝な顔をする。
「これ楽しみに来たんっすから。俺、パスタ好きなんっすよ。特にこのキノコ系の奴ね。いただきまっす」
光俊は嬉しそうに手を合わせてから、食べ始める。
「そう言えば、舞、パスタ得意だよね?」
「ん?そうなんっすか?」
美雪の言葉に、食べる手を止めないまま光俊が横目で舞を見た。
「得意って、パスタなんてゆでるだけじゃない」
「昔、キノコパスタも作ってもらったことあるけど、美味しかったよ。平野くんも今度作ってもらったら?」
「おお、いいっすね〜」
「ヤダ」
「いいじゃないっすか、作ってくれたって。あ、今度の火曜日にでもお願いしますよ」
「火曜日?」
「ええ、今、火曜日は京極家でご飯ごちそうになってるんっすよ。会長が作ってくれてるんっすけどね」
「へ〜、そんなことになってるんだ」
「今だけね。火曜日、皆でバレーの練習してるから」
「バレーの練習?」
「そなんっすよ。今度町内会のバレー大会に出るんでその練習してるんっすよ」
「皆で?」
「はい。ああ〜、社長は参加してないっすけど」
「へ〜。…今度見に行ってもいい?」
「は?」
意外な申し出に驚いて舞は美雪を見上げた。
「いいっすよ、いいっすよ。なんなら一緒にやりましょうよ。人が多い方が楽しいじゃないっすか。ねぇ」
「そりゃまぁ…筋肉痛の覚悟があるなら」
と、舞が同意したところで、
「片岡さ〜ん」
と、美雪が黒スーツの人から呼ばれた。
「はいっ!じゃ、二人とも、食べてばっかりじゃ怪しまれるから、テキトーに誰かに話しかけて『本気』を見せておいてね」
そう言い残して美雪は足早に呼ばれた方へと行ってしまった。