好きって言っちゃえ
「平野くんは誰かいい人いなかったの?」
ピザを手に取りながら舞は、パスタをがっつく光俊に尋ねた。
「まぁ、単純にかわいいなぁって、思う人は何人もいましたよ」
「へ〜そうなんだぁ」
「そうなんだ〜って。俺は、多額の返済抱えてるような男が結婚なんてしても、生活苦で、相手に夢も希望も与えてあげられないから結婚なんてしない方がいいと思ってますけど、別に女性が嫌いなわけじゃないっすから」
「なるほどね」
「俺の結婚しない理由は舞さんと違って現実的なんっすよ」
「ちょっと、どういう意味よ」
「だって、めっちゃ健康なのに癌になって死ぬのが怖くて結婚しないつもりなんでしょ?」
「…」
その通りなので言い返せない。
「心配しなくても、皆いつか死ぬんですから、そんなの気にしてても、意味ないっしょ」
「…」
「今日みたいに、可愛くしてたらまだまだチャンスあるかもしれないっすよ」
「え?」
と、そこにさっきまで西尾が座っていた席にあの七三頭の真っ青なスーツの男性が現れた。
「ここ座ってもよろしいですか?」
「ああ、どうぞ、どうぞ」
光俊が手を前に出して座るようにすすめる。
「失礼します」
男性は少し舞の方に椅子が向くように座った。
「あ、俺邪魔っすかね」
「いえ、別にいいですよ。そのパスタ抱えて移動するの大変でしょう」
「ははっ。そうっすよね。じゃ、遠慮なく。食べたら移動しますんで」
光俊はそう言うと、目が笑ってない舞を見て小さく笑いながら一人パスタを食べ続ける。