好きって言っちゃえ
「いいですか〜、白紙はだめですよ〜」
念押しする司会者の言葉にもなかなか手が進まない光俊と舞。そんな二人をよそに航はサッサと書き終えた。
「あれ?二人とも早く書かないと。白紙で出したら片岡さんに迷惑かけますよ」
「そう言われても…」
「結婚へ踏み出す気がないからな」
困り顔の二人を見て、
「あっ、いい事思いつきました」
と、航が二人を小さく手招きして、3人はテーブルの上で顔を寄せ合う。
「平野さんが、舞さんを、舞さんが平野さんを書けばいいんですよ。そしたら、ここだけで完結してますから、他の人に巻き込まれなくて済みます」
「なるほど〜」
光俊と舞は航の提案に大いに納得して頷きあうと、態勢を戻して、それぞれお互いの名前を書いた。
「書きましたか〜。それでは回収しますよ〜」
舞たちのテーブルに回収に来たのは美雪だった。美雪は小声で舞に声を掛けた。
「まさか白紙じゃないよね?」
「大丈夫。バッチリ」
「そう?良かった」
安心した笑顔を残して美雪は紙を回収して行った。
「カップルが出来ているか直ぐに確認しますので、少しお時間下さいね」
会場の隅で、美雪たちスタッフは今集めたばかりの紙を見てカップルが出来ていないか集計し始めた。司会の人が結婚とはいいものだという話をしている間に、集計が終わったようで、小さな紙が司会の人に手渡された。