好きって言っちゃえ
「はい、今日のカップルはこの5組の皆さまです。まずは、拍手」
会場にまばらな拍手が響く。
「はい、では、皆さんに幸せのおすそ分けということで発表した順に、こちらのカップルから恒例のキッスタ〜イムっ!」
「ええ!?」
「マジか…」
司会から一番遠くに立っている二人の顔が歪みに歪んだことに気が付いたのは、航と美雪だった。二人の動揺をよそに、最初のかっぷるはすで男性が女性の頬にキスし始めた。
「キッスは頬じゃなくてもどこでもいいんですよ〜。じゃ、次〜」
司会の人が煽るが、流石に今日お見合いパーティーで出会ったばかりの人間が人前で唇にするのは抵抗がある。が、結婚相談所の主催側としてはここでキスさせることで結婚を前提ということをしっかり自覚させたい狙いがある。
2番目、3番目のカップルと次々と頬にキスして徐々に舞たちの順番が迫って来る。
「どうすんのよ…」
「どうするったって…。やるっきゃないっしょ」
「え?」
「では最後のカップルどうぞっ!」
との司会の声に、光俊はクルッとテーブル席に背を向け、ガシッと舞の両肩を掴むと、グッと舞の顔に顔を寄せて少し顔を傾けた。
「っ!!!」
驚きのあまり心臓が止まりそうな舞。
「おおお〜」
今日一番どよめく会場。
「やったよ…」
目を疑う航。
「きゃ〜っ!素敵っ!そういうの待ってましたっ!」
興奮気味の司会の声が響く中、光俊は体勢を元に戻した。
「皆さんも、羨ましいな〜と思われたら、諦めずに頑張ってくださいね。では、今日のパーティーはこれでおしまいです。ありがとうございました」