好きって言っちゃえ
「いやいや、驚きましたよ」
美雪の計らいで結婚相談所の人に捕まることなく3人はパーティー会場から抜け出すことが出来、揃って駅に向かっている。
「ばーか、ほんとにするわけないだろ。あんなとこで。ねぇ」
「うん…」
光俊は頬だと触れていないことがバレるので、テーブル席に背を向けてそれっぽく見せただけだった。
「折角だから、しちゃっても良かったんじゃないですか?」
笑いながら航。
「なんだよ、折角って。あんなとこでチューしちゃったら仕事しずれーだろ。ねぇ」
「うん…」
「あれ?なんか舞さんテンション低くないっすか?あれ?もしかして、したほうが良かったすか?」
怒られるのを承知で光俊が舞の顔を覗き込んだ。
「んなわけないでしょ。いろんな人と話して疲れただけ」
とは言ったものの、男の人との久々の距離感に動揺したのを引きずっているのは事実だった。
「ですよね。そういえば、西尾は誰かいい人いた?」
「いたんですけどね〜、桃子さん」
「桃子さんって、あのピンクのワンピースの?」
「ええ。同い年だったんですよ」
「あ、ねぇ、西尾くんは年上はダメなの?」
舞は美雪を思って航に聞いてみた。
「え?…もしかして舞さん、平野さんじゃなくて、俺狙いでしたか?」
「は?」
思いもしない返しに目がテンになる舞。
「いや〜折角ですけど、僕は舞さんのことそういう目で見たことは…」
「…馬鹿じゃないの、あんたたち」
あきれ顔を残して、舞は早歩きで二人をより前を歩きだした。
「ははっ」
思わず顔を見合わせて笑う光俊と航。二人は小走りで舞に追いつき一緒に駅にたどり着いた。