好きって言っちゃえ
「西尾くんが書いてたのって、鈴木桃子さんだったよね」
「そうです、そうです」
「鈴木さん、結構人気あったのよ。指名されてた数で言ったら、女性一番人気だったんじゃないかなぁ」
「雰囲気がかわいい子だったっすからね」
「いや、顔もかわいかったですよ」
「それでも、カップルになれなかったってことは、ひょっとして、桃子ちゃん、俺指名しちゃってた?」
と、光俊。
「…」
「…」
「あ、こういうの、いらなかった?…スミマセン」
真面目に話してる二人にジロリと見られて小さくなる光俊。
「カップルになれなかったのは、鈴木さんが、白紙で出してたからなの」
「え?あんなに白紙はダメだって言われたのに?」
と、航。
「うん。それで、皆が帰ったあと、結婚相談所の人が鈴木さんに話を聞いたんだけど、あのパーティーに申し込んだ後に気になる人が出来たらしいのよ。
でも、その人には1度しか会ったことないから、その人を回る人に出会えたらって思って、参加したらしいんだけど」
「上回る人がいなかったと」
と、光俊。
「まぁ、そういうこと」
美雪は事実を包み隠さず答えた。
「そうですか…」
若干、気落ち気味の航。
「タイミングが悪かったな。あ、でも、カップルになれなくても後日相手に伺いますって言ってましたよね?一応、西尾の事も伺ってもらえてるんっすかね?」
と、光俊。
「どうですか?」
と、航。
「ん?ああ…。一応、誰が指名したかは伝えてあるんだけど、やっぱり誰とも会わないって、断ったみたい」
「そうですか。…ま、しょうがないですね。タダで行かせて頂いたんだし、諦めますよ」
と、力なく笑う航を見て、諦めてくれて良かったと思う反面、少々心苦しい美雪。なぜなら、今の説明は事実半分だからだ。本当は、桃子は結婚相談所の人に強く勧められて、指名していた人全員と会うという話になったいたのだ。
当然、その中に航の名前も入っていた。つまり、西尾が桃子を指名したということは桃子に伝わって入るが、
「ああ、この人は、うちの方でも他の方を紹介する予定がありますので、排除してもらって構いませんよ。いや、排除してください」
と、桃子に会うリストの中から強引に航は外したのだった。