好きって言っちゃえ
「ちょっと休むか?」
ボールが途切れたところで悠一が声を掛けた。
「そうっすね」
皆体育館の壁を背持たれに座り込んで休憩をとる。
「美雪、結構上手じゃん」
美雪の隣に座りながら舞が感心してそう言った。
「まあね。一時期、ソフトバレーとかやってたから」
「へ〜、そうなんだ」
「美雪ちゃん、疲れたでしょ、ジュースでも買ってきてあげようか?」
立ち上がって不意に悠一が声を掛けた。
「わーいっ!」
無邪気に喜ぶ美雪。が、他のメンバーは、
「ええ〜っ!」
とスゴイ形相で、悠一を見上げた。
「え?何々?」
皆の視線に驚く悠一。
「チーフ、俺らに1回もそんなこと言ってくれたことないじゃないっすか〜」
と、皆の気持ちを光俊が代弁した。
「あ、いや、美雪ちゃん久しぶりに会ったからさぁ。わかったよ、お前らのも買ってやるよ。秀人ついて来い」
「やった〜!」
光俊、航、舞は喜んでバンザイし、秀人は素早く立ち上がって、自動販売機に向かう悠一について行った。
「相変わらず優しいね、悠ちゃん」
「チーフって、誰にでも優しいんっすね」
と、光俊。
「『誰にでも』って、引っかかる言い方ね」
と、美雪。
「あ、別に片岡さんがどうのじゃなくて。ほら、うちの職場、女の人って舞さんしかいないじゃないっすか。まぁ、会長は置いといて。良く考えてみたら、チーフが舞さん以外の女性とフランクに話してるとことか見たことなかったんっすよ」
「確かに」
頷く航。
「だから何?」
と、舞。
「だから、あの優しさは舞さんに向けられてるんだって、勘違いしてました。チーフは、本当に皆に優しいいい男なんっすね」
うんうんとさらに頷く航。
「今更なに言ってんのよ。この前もチーフは人として優しいって言ってたじゃない」
と、舞。
「だから、あれは、勘違い…」
と、言いかけたところで悠一と秀人が両手に缶コーヒーを抱えて戻って来た。