好きって言っちゃえ
「飲んだら、ネット張って、サーブの練習でもしてみるか?」
と、悠一。
「そうですね、そろそろバレーらしい事練習しとかないと、哲平くんに申し訳ないですもんね」
「そう言えば来週様子見に、参加するって偉そうなこと言ってわよ」
「チーフは、もうカンは戻って来た感じっすか?」
「そうだな。まぁ、ジャンプ力は衰えてるだろうから、打ってみないとわかんないけど、体は大分動くようになったきたかな」
「チーフに頑張ってもらわない事には優勝ないっすからね。頼りにしてますよ」
「優勝狙ってんの?」
と、美雪。
「優勝賞金狙ってんの」
と、舞。
「ん?何が違うの?」
「メンタルっすよ、メンタル」
「ふ〜ん。試合はいつあるの?」
「7月の第2日曜日」
「日曜日?皆仕事は?」
「大丈夫、仏滅だから。それに何かあったらお義兄さんがやってくれるとになってる」
「そうなんだぁ」
「ブライダルハウスの結婚式も入ってないですし、片岡さん、仕事なかったら応援に来てくださいよ」
と、何となく話の流れで航が美雪を誘った。
「行くっ!行っちゃうっ!」
食い気味の返事するその速さに航への美雪の本気度が感じられる。そして、この流れに一気の攻め込む美雪。
「あ〜、それと、仕事じゃないんだから、『片岡さん』てのはなんか固いから皆もここでは『美雪ちゃん』で、宜しく〜」
「美雪ちゃん?」
と、一応呼んでみる航。
「そうそうっ」
上機嫌の美雪を横目に、
「『ちゃん』を強制するって、いい年してずーずーしい…」
呆れ顔で小さく独り言のように呟く舞。が、その声は隣にいた光俊には聞こえていた。
「ご希望であれば、舞さんも、『舞ちゃん』って呼びましょう?」
と、明らかにからかうのを楽しんでいる光俊。
「結構です。あ、だったら『様』で宜しく」
と言い残して、舞は立ち上って、倉庫の方にネットを取りに行った。
「『舞様』?…ないないないっ」
小刻みに首を振る光俊であった。