好きって言っちゃえ
「はぁ?話飛び過ぎ」
「まぁ前の舞だったら、なんか考え過ぎを抱えて胃を悪くして、ホントに胃癌になっちゃうんじゃないかって思わなくもなかったけど」
「…」
「今はストレスのはけ口があるんだから、もう胃は大丈夫。大事なのは、そのストレスのはけ口を捕まえておくことじゃない?」
「そんな事急に言われても。結婚なんてしないって」
「でも、あの時ちょっとは意識しちゃったよね?男として」
美雪はニタッ笑った。
「見ちゃったもんね。乙女になってる舞の顔」
「…」
無言でドリンクをすする舞。
「もう、返上しなさいよ、『結婚しない主義』」
「…だって、怖いんだもん」
「何が?」
「好きな人を残して、死んじゃうのも、残されちゃうのも」
「…」
「お義兄さんみたいに悲しみを背負わせるぐらいなら、最初から一人の方がいい」
「…だから、舞は胃癌で早々に死んだりしないって」
「わかんないじゃん、癌って遺伝するんでしょ。父さんも胃癌だったし…」
「そんなこと言ってたら大概の人は癌の遺伝子持ってるよ。癌じゃなくっても、突然事故死ってことも世の中にはあるけど、皆死ぬことばっかり考えてないよ?」
「でも…」
「分かった。じゃ、舞のことはとりあえず置いといて。平野くんはなんで結婚したくないの?」
「お父さんがギャンブルで作った借金を平野くんが全部背負ったんだって。で、その返済に追われてて、お金ないから結婚できないんだって」
「へ〜、借金ね〜。どのくらいの額なの?」
「さぁ、額まで聞いてないけど、相当あるようなことは言ってた」
「そうかぁ、借金がある男はダメかな、やっぱり」
「…」
「あっ!」
「ん?」
「いいじゃん、借金」
「なんで?」