好きって言っちゃえ
「こんばんは〜」
「いらっしゃいっ!」
入って来た5人を玄関で出迎えたのは、哲平だった。
「なんだ、お前も来てたのか?」
「うん。皆にバレーの練習の成果を聞かせてもらおうと思って」
「おっ、なんだか偉そうだな、中学生」
と、光俊。
「優勝したいんでしょ?だったら、僕がいないと勝てないでしょ?」
「おっしゃる通り」
光俊は頭を下げる。
「その話は中に入ってからにしろ、哲平」
と言いつつ剣二が先頭を切って居間へ入って行った。
「は〜い」
いつものように居間に置かれたテーブルの定位置に着席する面々。
そこに、舞と悦子が、それぞれ両手にパスタを入れた大皿を持って現れた。
「はい、丁度出来上がったわよ。あったかいうちに召し上がれ」
悦子側の席には、悦子が、舞側の席には舞が持ってきた皿を置いた。それぞれの皿に入っていたのはキノコのパスタと、明太子のパスタだった。
「おっ!キノコパスタじゃんっ。俺、好きなんっすよね。いただきますっ!」
そう言うと、光俊は真っ先に、キノコのパスタを取り皿に取って食べ始めた。
「ん、うまい」
「そう?それは良かったわ。皆も遠慮なく食べてね」
美味しそうにパスタを食べ進める光俊をちらりと見てから、舞も、パスタに手を伸ばした。
「ん?」
そのちらりとした視線に、気づいた光俊は、ふと、食べる手を止めて、舞を見た。
「あ」
「何?」
光俊は隣の舞にしか聞こえないような声で舞に尋ねた。
「ひょっとして、俺がキノコパスタ好きだって言ったの覚えてました?」
「…まぁね。言ったでしょ。パスタは簡単に出来るって。だから夜食には丁度いいかなと思ったのよ」
「ふ〜ん」
「何?まだ何か?」
「俺の為に作ってくれたのかと思ったんっすけど」
「…んなわけないでしょ」
「…ですね」
とは言っては見たものの、光俊がキノコパスタが好きだと言っていたのが頭に残っていて、パスタを作ったことには間違いなかった。そして、そのことを一瞬期待した光俊がいたことも、間違いなかった。