好きって言っちゃえ

晴天の日曜日、いよいよ『町内会対抗バレー大会』の日がやって来た。京極写真館の前ではジャージ姿の悠一たちが社用社のバンの前に揃って、悦子と剣二に見送られようとしていた。

「頑張って来てね」

「舞ちゃん、哲平の事、宜しく頼むよ」

「うん、大丈夫」

「哲平、調子に乗って、皆に迷惑かけるんじゃないぞ」

「分かってるって」

「じゃ、行ってきます。社長、あと宜しくお願いします」

そう言って、悠一が車に乗り込と続いて全員

「行ってきま〜すっ!」

と車に乗り込んだ。動き出した車を見送りながら悦子がボソッ呟いた。

「ああ、これで、皆がうちでご飯食べる理由がなっくなっちゃたわね」

「そうですね」

「ねぇ、剣二さん」

「なんですか?」

「舞、誰か気になる人が出来たかしら?」

「かもしれませんね」

「あら?そう?」

予想外の言葉に思わず悦子は剣二を見上げた。

「多分」

「誰?」

「平野じゃないですかね」

「あ〜、やっぱり平野くんかぁ」

「借金が気になりますか?」

「ならないって言ったらウソね。でも、あの子が死ぬ事ばっかり考えてないで、ちゃんと前向きに生きていけるんだったら、相手は誰だっていいわ」

「そうですね」

「それに、きっと舞は私以上に長生きするから、2人で働けば借金だってそのうち返せるわよ」

「お義母さんたちみたいに、ですね」

「ふふ、そうね。ま、私たちの借金はギャンブルじゃなかったけど。あ、ううん、こんな小さな町で商売はじめたんだから、それも一つのギャンブルだったかもね。ふふっ」

楽しそうに笑いながら悦子と、剣二は店舗の中に戻って行った。
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