好きって言っちゃえ
「桃子さん?」
そう、熊マンズにいる紅一点は鈴木桃子だった。桃子はサーブを打つと、素早くコート内に戻り、ボールが返って来ると的確に熊田にトスを上げ、熊田がバシッと大人げないスパイクで点を取った。
「…桃ちゃん、上手いじゃん」
脱力する光俊。そこまで見るとスゴスゴと席に戻るチーム京極。だが、その胸の内はバラバラだった。
「やっぱすごいな〜、熊田先生」
無邪気に感動しながらサンドイッチをパクつく哲平。
「チーフ、あの子と、知り合いなんっすか?」
「ああ、知り合いっていうか。スタジオに写真写りに来たお客さんだよ」
「あ、そうなんっすか。あ、もしかして、お見合い写真?」
「まあね」
「あ、それで舞さん、どっかで見たって言ってたんですね」
と、航。
「うん、撮影に立ち会ってなかったんで顔まではっきり覚えてなかったんだけど、あのピンクのワンピースは印象にあったから」
「え?舞ちゃんたちはどこで会ったの?」
「この前のお見合いパーティーっすよ。モテモテだったみたいっすよ。ねぇ、美雪ちゃん」
「…」
「美雪ちゃん?」
「ん?ああああ、そうなのよ。かわいいもんね、彼女。モテモテだったんですよ」
「航もその中の一人だったんだけどもう1回会うのもヤダッって振られちゃったんだよな〜」
「言わないで下さいよ〜」
男たちの話が進む中、一人目を泳がせる美雪に気づいて、舞が美雪と肩が触れ合うほどに近づいて座り、小声で尋ねた。
「どした?」
「…やばい」
「何が?」
「西尾くんが桃子さんともう一度会わないようにちょっと策を練ったのが、バレるかも…」
「え?どういうこと?」
「あ〜どうしようっ。バレたら、私、嫌な女だよね…」
「なんだかわかんないけど、バレなきゃいいんでしょ?大丈夫よ、西尾くん、自分を振った女に話しかけたりしないわよ」
「あ〜、西尾くんが話しかけないとしても、チャラ男が〜…」
「あいつか〜。分かった、あいつは私が見張っとく」
「お願い…」