好きって言っちゃえ
かくして、試合を楽しみにしていた美雪だったがサンドイッチを置いて早々に帰っていき、舞は自分たちのと熊マンズが試合をしているとき以外、ジッと光俊を見張り続けた。
「舞さん?」
光俊はため息をつきながら、舞の真横にやってきて座った。
「な、何?」
「何じゃないっすよ」
「ん?」
「俺が見とれるくらいいい男なのはわかりますけど。ちょっと見過ぎじゃないっすか?さっき、トイレにもついて来たっしょ?」
「…バレてた?」
「バレますよ。落ち着かないんで止めてもらえます?何なんすか?」
「ん〜。しょうがない。平野くん、恋する乙女ごごろわかるよね?」
舞はすがる瞳で光俊を見た。
「は?…舞さんが乙女ごごろで見つめてるってことっすか?」
「は?違うわよ。何言ってんの」
「いや、今のは、そうとしか聞こえないっしょ」
「違う私じゃなくて、美雪」
仕方なく舞は航に恋した美雪が、航の恋路を可能性を絶った事を光俊に告げた。
「なるほどね。かわいいとこあるじゃないですか、美雪ちゃん」
「でしょ」
「ま、それで俺が見張られてるってのは心外だけど」
「…」
「大丈夫ですよ。事の成り行きがわかってたら、余計なこと言いませんよ」
「ありがと」
「舞さんも、美雪ちゃんのそういうかわいいとこ見習った方がいいんじゃないっすか?」
「どうせ、私はかわいくありませんよ」
「ほら、そういうとこがかわいくないんですよ」
「…」
「ふっ。ま、そんな偏屈なとこもかわいいっちゃ、かわいいっすけどね。ははっ」
と、言い残して光俊は、試合を見に前列へと歩いて行った。
「…チャラい」
口をついて出た言葉とは裏腹に心拍数が上がってしまう舞なのであった。