好きって言っちゃえ

「だから、お義母さんが寮を建てて、ブライダルハウス参入の資金も出してくださるというのなら、いっそこの機会に『京極写真館』を会社組織にしたらどうかと思うんですが、どうですか」

「会社?」

舞はついていた肘をテーブルから外して、剣二を見る。

「ああ」

「いいんじゃないの。もう、お義父さんも愛もいないんだし、剣二さんが思うようにしていいと思うわ」

大きく頷きながら悦子は剣二の案に賛成した。

「私も賛成。社員増やして、他社と提携したりするんなら、今までみたいになぁなぁな感じじゃなくって、キチッと会社組織にしたほうが、来てくれる人も安心してくれると思うし」

と、舞。

「そうよね」

「じゃ、明日、悠一くんにも話して、その方向で、進めていくってことでいいですか?」

と、剣二は悦子と舞の顔を順に見た。

「異議なし」

「異議なし」

悦子と舞は右手を挙げた。

「ねぇねぇ、会社になったら、僕は三代目にならなくていいってこと?」

と、哲平。

「そうよ。勉強しないでボヤ〜としてたら、働くところはどこにもなくなったってこと」

と、舞。

「えっ?」

「はい、じゃあ、今日はこれで解散っ!おやすみなさい」

と、悦子は少し大きめの声を出して、スッと立ち上がった。

「おやすみなさい」

「おやすみなさい」

剣二と舞もばらばらと席を立ち、それぞれの部屋へと帰って行き、哲平だけがテーブルに残された。

「写真館継がなくてもいいってことなんでしょ?今の話。ん?写真館継げないかもしれないって話なの?」

しばし、頭を悩ませる哲平なのであった。
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