好きって言っちゃえ
「どう?どっちにした?」
と、舞が航を見た。
「もちろん、待ちますよ。待たせていただきます」
と、航。
「そっか。じゃ、はい」
舞はにっこり笑うと、ジャージの上着の右ポケットから缶コーヒーを取り出して、航に、ポンっと投げた。
「おっ。ありがとうございますっ」
笑顔でナイスキャッチの航。
「まだかな〜、悠ちゃん」
航はプチっと開けて直ぐに飲み始め、舞は会場の中の方を伺って見る。
「いやいやいや。俺のは?」
と、光俊。
「あ〜、あ〜、忘れてた。ハイっ」
舞は今度は左ポケットから缶を取り出し、無駄に大きく弧を描くように放り投げ、光俊に渡した。
「アザースっ」
ナイスキャッチでそのまま流れるような動作でプチッと開けた光俊に、
「ああ、それ炭酸だから」
と舞が声を掛けたのは、
「あああああああっ!」
と、光俊が泡にまみれて大惨事になった後だった。
「きゃはははっ!あはははっ!」
「ちょっとっ!舞さんっ!笑い事じゃいっすっよっ!」
「だって〜、こんなに上手く行くなんて思って無かったんだもんっ。あはあはあはっ」
舞は、笑いながらもカバンからハンドタオルを出して光俊に手渡した。
「ごめん、ごめんっ」
「も〜っ」
光俊は受け取ったタオルで拭きながらジロッ舞を見た。
「何やってんっすか」
「いや、私は上手くいかないと思ったんだけど、あの二人が、平野くんだったら絶対引っかかるからやれやれって言うから〜」
と、舞に指をさされ、爆笑していた秀人と哲平はサッとそっぽ向いた。
「おまえら〜」
「平野くんも素直なとこあんのね」
濡れたタオルを受け取りながら舞が言うと、笑ってみていた航が、
「分かりにくいですけど、なかなかいいとこもありますよ、平野さん」
と、付け足した。
「お前な〜」
光俊が苦笑いしたところに、
「ごめん、待たせたね」
と、悠一が現れた。