好きって言っちゃえ
隣の部屋
「じゃ、帰りますか」
と、航の号令で、皆で揃って駐車場へと歩き出した。京極写真館では、悦子が今か今かと帰りを待っていた。
「あ、帰って来たわっ!」
ガラスのドアの向こうに社用車が入って来るのが見えて、思わず、店を出ようとカウンターから出た悦子だったが、店番を抜け出して迎えに行ったら、舞に叱られると、思い直して、カウンターの中に戻り、皆が入って来るのをじっと待つ。間もなく、
「ただいまーっ!」
と、大きな声の哲平を先頭にドヤドヤと皆が入って来た。
「お帰り〜っ!」
皆、店に入って真っ直ぐカウンターまで歩いて、ずらっと1列に並んだ。
「で、百万は手に入った?」
皆の顔を見渡して、悦子が尋ねる。
「それがっすね…」
「負けちゃった〜っ!」
光俊が言いかけたのを途中で遮って哲平が叫んだ。
「あらっ?負けちゃったの?じゃ、百万は?」
「残念ながら〜」
ひらの光俊が顔を大袈裟に歪めて見せた。
「それは、残念だったね〜」
悦子も合わせて、大袈裟に残念そうな表情を作って返す。
「社長は、上ですか?」
悠一に尋ねられ、悦子は顔を戻して悠一を見た。
「あ〜、上にいるけど。特別用がないなら上がらなくてもいいわよ。帰ってきたら、お風呂入って、ゆっくりご飯食べに来るように伝えてくれって、社長が」
「え?今日もごちそうになっていいんっすか?」
と、光俊。
「本当は、祝賀会の予定だったんだけど、お疲れ様会になっちゃたわね」
「スミマセン」
「あら、謝る事じゃないのよ。ま、詳しい話は、食事の時に聞かせてもらうとして、皆一回帰ってらっしゃい」
「じゃ、お言葉に甘えさせていただきます」
悠一がそう言って悦子に小さく頭を下げたので、光俊、航、秀人も続けて頭を下げて、アパートへと戻って行った。