好きって言っちゃえ
いつものように京極家の居間に勢ぞろいして、哲平の手にはコーラ、他の者の手にはビールのグラスが握られて乾杯の時を待っていた。
「皆、町内会対抗バレーボール大会に出場してくれて、ありがとう。優勝じゃ無かったのは残念だったけど、よく頑張ってくれました。お疲れ様。じゃ、かんぱーいっ!」
悦子の音頭で、全員、
「カンパーイっ!」
と、カチカチとグラスを合わせ、ゴクゴクとビールに口をつけた。
「ん〜、うまいっ!これが、優勝してたらもっと美味かったんっすけどね〜」
「で?結果はどうだったんだ?」
と、仕事場から真っ直ぐ打ち上げに参加している剣二が尋ねた。
「準優勝だよ、準優勝っ!」
哲平が、胸を張って答えた。
「え?準優勝?そりゃあ頑張ったな」
もっと、あっさり負けたのだと思っていた剣二は予想外の答えに驚いて皆の顔を見渡した。
「そうなんっすよ〜。頑張ったんですけどね〜。『熊』に負けました」
「熊?」
「熊田先生だよ」
「熊田先生も出てたのか?」
「うん」
「そう言えば、熊田先生、教員やる前、ちょこっとVリーグでやってたって聞いたことがあるな」
と、悠一。
「上手いはずですね」
と、納得して頷く航。
「セッターやってた女の人も上手かったよね。それに舞と違って、きれいなお姉さんだった」
「…」
悪気無く喋る哲平に一瞬、航、光俊、舞の三人の空気が張り詰めたが、光俊が空かさず場を濁した。
「いいのか〜、そんなこと言って。張り倒されるぞ」