好きって言っちゃえ
「でも、そういう人は、家に持ち帰ってまでは仕事しないでしょ。私は、ほら、納期が迫ったら、残業もしなきゃなんないし、休み返上って時もあるし」
「じゃ、暇な時期だけでもいいわよ。お正月と卒業、入学シーズンと、秋の七五三シーズンでしょ?あんたが忙しいのは。ねぇ、剣二さん」
「ええ、まぁ」
急に話を振られて、剣二はどっちの味方につこうか考えながら、曖昧に答えた。
「丁度良かったわね。今から夏に向けては残業しなくて大丈夫なシーズンよ」
「…」
もう、言い逃れの言葉が見つからない…。
「はい、じゃ決まりね。来週から、水曜日は舞が晩御飯作る事」
「え〜」
もう、うんざりした声を出すのがせめてもの抵抗となった舞。
「良かったわね、哲平。食べたいものがあったら舞に言っときなさいよ」
「やったーっ。僕ね、オムライスが食べたいっ」
「あら、オムライスぐらいおばあちゃんでも出来るわよ。もっと難しいもの注文しときなさいよ」
「ん〜じゃ、グラタンっ!」
「いいわね、グラタン。じゃ、舞、来週の水曜日はグラタンで決まりね。宜しく」
「…」
自分を無視してドンドン話が進んで行くので、返事をしたくない舞。
「あ、休みの日はデートがあって作れないって言うんなら、それは認めてあげるわ〜」
そう言いながら、悦子は立ち上がって、洗い物を台所に運んで行った。その言葉を受けて、剣二が小さく頷きながら、舞に声を掛けた。
「ごめんね、舞ちゃん。哲平が余計な事言ったばっかりに。でも、デートだと作らないでいいらしいから、デートする相手探してみるのもいいかもね」