好きって言っちゃえ
「知らない」
「いや、知らないって。人数足りてるんだったら、参加しなくていいんじゃないの?」
舞のその正当な疑問に美雪は低い声で答えた。
「私が、参加したいの」
「は?」
「参加して、西尾くんに告白したいのっ」
「えええ~っ!」
舞は思わずのけ反った。
「なんで、わざわざこんなとこに行って告白しなきゃいけないのよ。西尾くんとは週に2、3回は会ってるでしょ?」
「会ってるわよ、仕事でね」
「仕事だってなんだって、仲良くやってんでしょ?」
「まぁ、そこそこね」
「いいじゃない、そこそこ最高」
舞は茶化すようにそう言うとビールをゴクッと飲んだ。
「・・・いいわよね、舞は利害関係が成立してる彼がいて」
美雪はビールをゴクゴクとあおった。
「・・・あんた、その話、お義兄さんにしたでしょ」
舞の低く過ぎる声を無視してビールを飲み続ける美雪。
「・・・」
「言っとくけどね、別になんでもないですから」
「あっそ」
「あっそって・・・。なんなのよ、人のことには興味なしですか」
再び舞がビールをごくりと飲む。
「興味持ってほしい?」
「別に・・・。で、なんで、わざわざ婚活イベントに参加したいわけ?」
「よくぞ聞いてくれましたっ」
「・・・聞くしかないでしょうが」
「刺身の盛り合わせお待たせしましたっ」
若い威勢のいい店員が二人のテーブルに料理を運んできた。
「じゃ、今日は、美雪のおごりってことで。いただきま~す」
きっと、婚活イベントに出る羽目になるであろうと覚悟を決め、舞は鯛の刺身を頬張った。