好きって言っちゃえ

1階が店舗、2階がスタジオ、3階、4階が住居スペースとなっている京極写真館。

「無事に出発したみたいね」

店の中に入ってきた剣二の姿を見て、受付カウンターの中にいた悦子がにこやかに声を掛けた。

「ええ」

笑顔というよりは、少し笑いながら、剣二が答えた。

「あら、『無事』って感じでもなかったかしら?」

笑う剣二を見て、眉をひそめて聞き直す。

「いえ、無事に出発しましたよ。平野と西尾さえしっかりしてくれていれば、大丈夫ですから」

「ああ、秀人くんは、なんだかバタバタしてたわね」

大慌てで出て行った、秀人の様子を思い出し、思わすフフッと悦子も笑ってしまった。

「秀人を見ていると、ここに来たばかりの自分を思い出します。やる気ばかりがから回っていて。お義父さんには随分迷惑をかけました」

「あら、そんなことないわよ。いつも剣二くんは覚えが速いって、褒めてたし」

「褒めれれて伸びるタイプなんで」

と、照れ笑いの剣二。

「秀人くんも頑張ってくれるといいわね」

「はい」

「それはそうと。ねぇ、剣二さん」

「はい?」
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