好きって言っちゃえ
美雪が真剣さを出してきたので、舞も気を取り直して座り直す。
「ちゃんと話してよ」
「わかりました。真面目に話します」
美雪はまるで囲碁か将棋を始めるかのように、舞に小さくお辞儀をすると話し始めた。
「私さ~、今の仕事好きだから、結婚したとしても辞めたくはないんだよね。
西尾くんもさ~、舞んとこ勤め始めたばっかだから、そうすぐには辞めないでしょ?」
「辞められたら、うちは困ります」
「だよねー。ということは、これから先も何年かは顔合わせて仕事する事になるわけじゃない?」
「そうね」
「だから、気まずくなることだけは避けたいわけ」
「ええ~、それは心配ないんじゃない?」
「どうして?」
「いや、さっきも言ったけど、西尾くんって、空気読める人だから、たとえ、美雪を振ったとしても、気まずくなるような振る舞いはしないわよ、大丈夫よ」
「・・・私が振られる前提の話、ありがとう」
「あれ?今、そういう話よね?」
「まぁね。西尾くんの事だから、きっと何事もなかったように接してくれるとは思うけど」
「けど?」
「・・・自分に自信がない」
「美雪?」
「うん。私が何もなかったように振舞えるか、自信がない」
「そっか~~~」
舞は大きく何度もうなずいた。
「あんまり昔の事過ぎてすっかり忘れてたけど、美雪振られると落ち込むもんね~」
「・・・はい」
「あれ、いつだったっけ?振られたその日にめちゃくちゃ飲んで3日酔いぐらいになっちゃってさ~。
結局1週間ぐらい有給取って休んだんじゃなかったっけ?」
「・・・その通りです。ま、若い時の話だけどさ」