好きって言っちゃえ
「だから、まともに告白したくないんだぁ」
「そう。だけど、だけどさ」
「だけど?」
「今の気持ちを持ったまま、なんか当たり障りなく西尾くんと仕事していくのも、もうしんどいのよ」
「本気なんだ・・・」
「だから、本気だって言ってるでしょ、最初から」
「ごめん」
「だから、白黒つけて、次に進みたいの」
「次って?」
「結婚」
「西尾くんと?」
「そりゃ、それがベストだけどさ。この仕事してると、人の幸せみせつけられるじゃない?
目が合っただけで、意味なく微笑みあったり、肘が何となく当たっただけで、イチャイチャ小突きあい始めるのを見せつけられるばっかりじゃなくてさぁ~。せめて私もなんか、こう、頑張った後くらいにはさぁ、頭ポンポンして『頑張ったね』って、優しく微笑みかけてくれる人が欲しくなるわけ」
「なるほど」
「でもって、そんな妄想する時、浮かぶ顔が決まって西尾くんなんだよね~」
「なるほど~」
「でさぁ、実際、西尾くんと顔合わせると、爽やかな笑顔で『頑張ってますね』とは、言ってくれる事はあっても
頭ポンポンしてくれる事なんて・・・あっ!」
「ん?どうした?」
何かを思い出し、美雪は苦々しい顔で
「『頑張ってるね~』って、馴れ馴れしく言いながら肩揉んで来る奴はいるのよ」
と、呟いた。
「それって・・・」
「そう、平野くん」
「・・・だよね」
「あの男は、ほん~~っとチャラいから、誰にでもフレンドリーなのよね」
「そのチャラい男を私に勧めてるんだ」
と、言う舞を無視して美雪は続ける。
「だけど、なかなかいいタイミングで声かけてくれるのよ、奴は」
「へ~」