好きって言っちゃえ
『返しなさい』と今更大仰に怒っても逆効果だと咄嗟に判断した舞は、平然を装いトーストをかじった。が、哲平の言葉に大仰に反応した悦子が、あっという間に舞の前に立っていた。
「あんた、結婚したいの!?」
「・・・」
「ついに、その気になったのねっ」
悦子に迫力に押されて呆れながら舞は冷静に答えた。
「結婚したいのは私じゃなくて、美雪です」
「あら?美雪ちゃん」
「そうです」
「なんで美雪ちゃんが結婚したいのにここにチラシがあるんだよ?ホントは舞が・・・」
と、哲平が疑いの目で舞を見た時、
「おはよう~って、おや、皆さんお揃いで」
と、剣二が入ってきた。
「おはよう、剣二さん。いいところに来たわ」
「いいところって、朝ご飯食べに来たんですけど・・・」
「そうだよ、おばあちゃん、僕のトーストまだぁ?」
「あらやだ。真っ黒かも」
悦子は急いでトースターの蓋を開けたが、案の定、焦げ焦げとなったトーストが2枚入っていた。
「あらま」
「僕いやだ~。おばあちゃん焼き直してよ~」
「あ、じゃ、それ、僕が頂きます。自分のは自分でやれ」
「イテっ」
剣二に頭をはたかれて、仕方なく、哲平は立ち上がり、トースターの方へ行った。
哲平と入れ替わりで悦子が席に着いた。
「じゃ、これ焦げてて悪いけど、食べてね」
悦子が剣二の方に、自分のとは別の皿に乗せた黒焦げトーストを差し出したので、剣二もいつもの通りの席に着いた。
「いただきます」
「で、美雪ちゃん、このイベントに行くの?あら?これって、前に舞が美雪ちゃんの紹介で行ったのじゃないの?」
「そうよ」
剣二は哲平が広げていったチラシを手に取った。
「このイベントまたやるのんだ?」
「うん、イベント自体は定期的にやってるらしいんだけど」
「へ~」
「結婚してくれる人がいないと結婚式場は儲からないから」
「そりゃそうだ」