好きって言っちゃえ
「でも、このイベント、美雪ちゃんは主催側だから参加できないって、言ってなかった?」
「そうなんだけど、今回は、これにかけたいからって、有給取って個人的に参加するんだって」
「まぁ、そうなの。いい相手が見つかるといいわね」
「それで、社長にご相談なんですが」
舞は、『お義兄さん』とは呼ばず、あえて『社長』と言い、背筋を伸ばした。
「何?何?」
思わずつられて背筋を伸ばす剣二。
「このイベント、また私たちも参加していいでしょうか?」
「たち?」
聞き返す剣二を無視して悦子が興奮気味に
「いいわよ、いいわよ、ドンドン参加しなさい」
と、許可を出す。
「母さんは黙ってて」
「いや、会長がいいっていうんなら、俺はいいけど。舞ちゃん以外のメンバーは誰?」
と、剣二。
「前と同じ二人をお借りしたいんですが」
「ってことは、西尾と平野か」
「あら、いいじゃない」
悦子は、舞が婚活イベントに参加するというだけで上機嫌なのである。
「でもなんで、美雪ちゃんが結婚したいからって、二人が一緒に行かなきゃいけないんだよ」
程よく焼けたトーストを皿に乗せた哲平が自分の席に着きながら尋ねてきた。
「あら、それもそうね。舞が付き合いで参加するのはわかるけど、平野くんたちはどうして?」
「どうしてって・・・」
舞が、思わず言いあぐねているのを見て剣二が推測を口にした。
「人数合わせで呼ばれたんじゃないとなると、美雪ちゃんがこのイベントに参加したい理由が二人のうちの
一人にあるってことかな」
「・・・」
ますます言いよどむ舞。
「ええ?それってどういうこと?」
哲平がトーストにかじりつきながら剣二を見た。