好きって言っちゃえ
『結婚したいあなたへ』の会場となっているイタリアンレストランには参加者が続々と集まって来ていた。その波に紛れて光俊と航もやってきた。男女別になっている受付でそれぞれ会費と引き換えに名札を受け取っている。
「あれ?会費の事聞いてます?」
航が光俊を見る。
「聞いてない。あ、まさか、会長が本気で参加しろって言ってたのは、自費だからってことか?」
前回も人数合わせのため無料で参加したので、今回まさか会費を取られるなんて考えてもいなかった2人。不安になりながら、並んでいると順番が回ってきた。
「平野光俊と、西尾航です」
光俊がそういうと、受付の女性が名簿をチェックして、
「ああ、お二人はすでに会費は頂いておりますね。じゃ、これ、名札です」
と、名札を手渡してくれた。
「ああ、そうっすか」
ほっと胸をなでおろす光俊。2人は名札を受け取ると、会場の中に入って行った。
「今日も皆さん、気合入ってますね」
「だな」
そこには黒スーツでビシッと決めて、テキパキと動く主催者側の女性たちがいた。
「あ、平野さん。あの人、この前の司会のひとじゃないですか?」
「ホントだ」
黒スーツの集団の真ん中にでひと際目立つ前回の司会の女性が若いスタッフに指示を出している。
「大丈夫ですか、平野さん」
「何が?」
「あの人がいるってことは、また白紙は許さないって、言われちゃいますよ」
「だな」
「今度は舞さんいないから、申し合わせるわけにもいかないし」
「だな。・・・ん?」
「どうしました?」
「あれ、舞さんじゃね?」
光俊が小さく指さした先に、舞がいた。当然であるが、2人は舞が参加しているとは聞かされていなかった。立って他の女性と談笑している舞のもとへ光俊と航が歩み寄った。
「舞さん」
光俊が声をかけると、舞と一緒に隣のピンクのワンピースを着た女性も一緒に振り返った。