好きって言っちゃえ
「こんにちわ」
「・・・片岡さん!?」
「・・・片岡さん!?」
目での情報を脳に伝えて納得してから声にするまでの間を同じくして、光俊と航がほぼ同時に声を出した。
「え?どうしたんですか?」
日頃の黒スーツで髪をひっ詰めている様子ではなく、ピンクのワンピースで『女』を前面に出してきている美雪の姿に、航が思わず問いかけた。
「ああ、お2人も人数合わせっしょ?」
航の疑問に、光俊が答えを出し、光俊は1人納得して頷いた。と、
「何言ってんの」
舞の冷ややかな視線を受ける羽目になる光俊。
「え?違うんすか?」
意外な舞の態度にキョトンとする光俊。
「私たちももう30超えてんだから、そろそろ本気ださないとって、ねぇ、美雪」
美雪が航への思いに決着をつけるために人数合わせではなく、本気で参加していることをそれとなく航に伝えておかないといけない使命に駆られて、舞は力強くそう言い切った。
「へ~」
航はなんとなく納得し、頷いた。が、光俊はニヤリとし舞を見た。
「『私たち』って、じゃ、舞さんも『結婚しない主義』は撤回っなんっすか?」
「っ!」
美雪の事に肩入れするあまり、自分を道連れにしてしまった事に気づいていなかった舞は、思いがけない光俊の言葉に驚いて、咄嗟に返す言葉が出て来ない。代わりに、今度は美雪が答えた。
「そうよ。舞なんて今年の健康診断だって、どっこも悪くなくって、健康そのものなんだから、もう結婚しない主義なんて、撤回撤回。ね、舞」
「っ!」
フォローしてくれるどころか、光俊の言葉に乗っかった美雪にますます言葉が出て来ない舞。
「ですよね。舞さん元気そうだし、会長も走れるぐらいめちゃくちゃお元気ですから、大丈夫ですよ、長生き出来ます」
航は悪びれずににこやかに舞を見た。
「・・・ありがとう」
最早、そんな言葉しか出て来ない舞であった。