好きって言っちゃえ
「・・・それはぁ」
『美雪の付き添いです』と、言っていいものか言いよどむ舞。そんな舞を見て光俊が笑って呟いた。
「片岡さんの付き添いでしょ?」
「え?」
「やっぱり」
「な、な、なんでわかったのよ」
「誰がどう見たってわかりますよ。あのワンピース」
と、2人は愛想笑いを浮かべながら向かいの男性と話ているピンクのワンピースに包まれた美雪を見た。
「あれ、絶対、桃子さん意識してますよね」
図星である。
「てことは、西尾狙いでしょ?」
バレバレである。
「ねぇ」
舞は光俊を見つめた。
「はい?」
光俊も舞を見る。
「平野くんが気づいてるってことは、西尾くんも気づいてるかな?」
「さぁ、それはどうっすかね。あいつ、そういうの意外と鈍いっすからね」
と、2人は向かいの可愛い女性と楽しそうに話している航を見た。
「で、舞さんはどうするつもりなんっすか?」
「どうするって?」
光俊の質問で、再び顔を合わせる2人。
「ほら、この前みたいに誰か選ばないと、あの司会の人、怒りますよ」
「ああ~・・・」
「さすがにもうお互いを書くわけにはいかないっすよね」
そう言いながら光俊は右手の人差し指で自分と舞を交互に指した。
「ぇ?」
舞の口から光俊に聞こえないくらいの小さな声が漏れた。光俊に『お互いを書けない』と言われ、一瞬思考が止まってしまった為、返す言葉が出て来ない。そんな止まってしまった舞を不可解そうに見る光俊。
「どうかしたんすか?」
「あ~、いや別にぃ~。そうよね、書けないよね。あっ!今日は西尾くんでも書いとこうかな」
「ふ~んなるほど。そうっすか」
何となく不自然な返事をする舞に拍子抜けしたように光俊が頷いたところで、
「は~い、5分経ちましたよ~。男性は立ち上がって、ひとつ前の番号の方へ移動して下さ~い」
と司会の女性の号令がかかり、
「じゃ」
と、光俊は立ち上がって席をずれて行った。