好きって言っちゃえ
「悪いけど、片岡さんは俺が先約だから。ね」
と、航は美雪に同意を求めてきた。
「・・・はい」
思わずきちんと返事をしてしまう美雪。
「そういうことだから。悪いね」
「いえ。じゃ」
その男性は爽やかにその場を立ち去って行った。美雪はその男性の後ろ姿をぼーっと見送ると、頭上から航の声がした。
「すみません、勝手な真似して」
その声で美雪はハッと我に返ったように航の顔を見上げた。
「・・・いいの?私と話してても」
「どういうことですか?」
「私、期待しちゃうよ?」
「期待してもらっていいかどうか、僕も見極めたいんで」
航は少し笑いながらそう言ったが、おそらくそれは本心だ。
「だから、少し付き合ってもらえますか?」
「もちろん」
航が真剣に考えてくれていることが嬉しい気持ちを抑え、美雪ははにかんだ微笑みを浮かべた。
その頃、舞は美雪のその様子を遠くから眺めていた。
「西尾くんもいいとこあるじゃん」
なんて、一人で呟きながら、とりあえず今日の自分の役目は終わったなとホッとして、改めておいしそうな料理を選んで、皿いっぱい取ると、最初に座っていたテーブルの自分の席が空いていたので、戻って座ると、同時に隣に座る人がいた。
「あ」
「あ」
顔が合って思わず同時に声が出た二人。
「なんっすか、その山盛り」
「自分だってパスタ山盛りじゃない」
舞の隣に座ったのは、皿にきのこパスタだけを山盛りに盛って、やはり元の席に戻ってきた光俊だった。
「食べ放題ですからね。しっかり食べないと」
光俊の嬉しそうな顔に呆れながら、舞は自分が取ってきた皿の向かって、手を合わせた。
「いただきます」
「いただきます」
光俊も手を合わせた後、さっそくパスタをがっつき始めた。