好きって言っちゃえ
隣で勢いよく黙々とパスタを食べる光俊の気配に、思わず自分の食べる手を止めて光俊の方を見てしまった、舞。その視線に気づいて、光俊のはパスタを頬張りながら舞の方を見た。
「なんっすか?」
「いや、ホントにパスタ好きなんだなと思って。美味しい?」
「そりゃ美味しいっすよ。あ~、けど」
「けど?」
「舞さんが作ってくれたののほうが、俺の口にはあってましたかね」
それは、光俊の素直な感想だった。が、光俊の口からそんな言葉が出てくるとは全く想像だにしていなかった舞は想定外に怯んでしい、返す言葉が出て来ない。
「・・・ん?俺、なんか、悪いこと言いました?」
舞の異変に気付き、光俊は、食べる手を止めて、舞を見た。見られた舞は、急に恥ずかしくなり、逆に自分の取ってきた料理をがっつき始める。
「別にっ」
「なんなんっすか」
人の気も知らずに、とぼけた顔で舞を見る光俊に、なんだか舞は怒りが込み上げてきた。
「・・・チャラい」
「え?何っすか?」
小声で呟いた舞の声を聞き返してきた光俊を舞は、キッと睨んでもう一度はっきり聞こえるように呟いた。
「チャラいっ」
「は?今の会話のどこら辺がチャラいんっすか?」
光俊には舞が何故急に怒っているのか見当がつかない。
「今の会話も、日々の会話も、態度も、全部全部ぜ~んぶっチャラいのよっ」
最早、光俊を意識している自分を認めないわけにはいかなくなった舞の往生際の悪い遠吠えである。が、舞の中の異変に気付かない光俊は、急に責められて納得がいかない。
「ちょっと、舞さん。それは聞き捨てなりませんな。全部チャラいって、なんっすか?舞さんの作ったパスタの方が美味しかったって言っただけじゃないっすか」
舞は苦虫を嚙み潰したような顔で光俊を見る。
「・・・だから、それがチャラいって言うの~」
「は?なんで?あっ!ひょっとして、照れてるんすかぁ」
光俊はにんまり笑って舞を見る。そう、その通りである。が、舞の表情は益々険しくなってく。