好きって言っちゃえ
「あはははっ。図星っすね?ほんと、面白いっすよね、舞さん。一緒にいて飽きないっすよ」
と、舞の顔を見て光俊が声を立てて笑った直後、背後から、光俊と舞の肩をグッと抑える手が伸びてきた。
「楽しそうね、お2人さん」
そう言いながら、2人の間にヌッと入ってきたその顔は、紛れもなく司会の女性だった。
「ええ、まぁ」
光俊は愛想笑いを浮かべながら、近づいてきた司会の女性の顔を見ずに答えた。
「覚えてるわよ、あなたたちのこと」
「あ~、そうっすか?いや、人違いかもしれませんよ」
「ううん、間違いないわ。だって、あんなにブチュ~って、やってくれたのあなた達のほかにいないもの。ちゃんと覚えてるわよ」
「はははっ。そうっすか」
「で?なんで、カップル成立してあんなに盛り上げてくれたあなたたちが、また、ここで盛り上がってるわけ?」
「それは、まぁ、何と言いますか~」
「まさかと思うけど『サクラ』じゃないわよ?」
「いや、まさか、まさか」
この司会者は『サクラ』を決して許さないと以前美雪から聞かせれている。
「じゃ、どうして、2人でここにいるのかな~?」
「それはっすね~。・・・あ~、あの時は意気投合してカップルになったんですけど、やっぱり違うかなって、別れたんっすよ。で、今日来たら、たまたま隣でまた意気投合しちゃってって・・・、ねぇ」
言い訳を考えながら口から出まかせを言ってみた光俊は、司会の女性を無視している舞に同意を求めて見た。と、舞はまだ苦い顔をしている。
「舞さん?そうっすよね?」
舞の顔を覗き込む光俊。一緒に司会の女性も舞の顔を覗き込んだ。
「・・・い、痛い」
舞は胃を両手で押さえて苦痛な表情をしている。
「まぁ、冷や汗出てるじゃない」
司会の女性が慌てて光俊に指示を出した。
「すぐタクシー呼ぶから、あなた、この͡子をお医者に連れて行きなさい。もう、帰って来なくていいから。さぁ、早く」