好きって言っちゃえ
「大丈夫っすか?」
「はぁ・・・。すっごい痛かったぁ~」
消え入りそうな弱弱しい声を出して脱力する舞。
「え?まさか。ここに来て、急に治ったとか?」
驚く光俊の方を見ることもなく、舞は、胃の辺りを摩りながら答えた。
「うん。今、治まった」
その言葉を聞いて、運転手が、話しかけてきた。
「おや?じゃ、戻りますか?」
「ああ、そうっすね~」
光俊が答えかけたその時、舞が、ガシッ!と光俊の右腕を両手の物凄い力でつかんで、
「ヴヴヴヴ~」
と、呻き始めた。
「すみません、このまま病院行ってくださいっ!・・・い、痛いっす。舞さん」
「ヴヴヴヴ~」
再び激痛に見舞われた舞は、光俊の腕を離し、胃を押さえると、そのまま光俊にもたれかかった。
「しっかりしてくださいよ。もうすぐ、着きますから」
光俊は、右腕を舞の右肩に回して、がっちり舞を受け止めた。そのまま、タクシーに揺られること数分、緊急病院にたどり着いた。
「ありがとうございました。あ、反対側のドア開けてもらっていいですか」
光俊は、運転手にそう言うとタクシーを降り、急いで舞側のドアの方に向かい、ドアを開け、まだ座っている舞に声を掛けた。
「こっちから、降りたほうが楽でしょ」
声を出す力が出ない舞は、光俊を見つめて『気遣いありがとう』の気持ちを込めて小さく頷くとゆっくり体の向きを変えて足を車の外に出した。
「はい、掴まって」
光俊は舞を引っ張り出すように腕を支えて、舞はタクシーを降りた。
「ありがとうございました」
光俊は、もう一度お礼を言うとドアを閉めた。2人が降りたのを確認すると、タクシーは発車して行った。
「歩けますか?」
「・・・だ・い・じょ・う・・ぶ・・・」
弱弱しい声を出しながらも、胃を押さえながらゆるゆると歩き出す舞。
「まだ大分痛むんスね。おんぶしましょうか?」
「!だっ、だっ、大丈夫だから」