好きって言っちゃえ
胃を摩りながらストンと隣に座った舞の横顔をマジマジと見る光俊。

「・・・何?」

そんな、不自然な視線を感じ、今、少し痛みが和らいだタイミングだったので舞の口からしっかりした声が出た。

「あ、いえ・・・」

光俊は口ごもると、前を向いた。そんな光俊を見て、舞は、改めて光俊が自分に付き添ってきてくれたことに気が付いた。

「あ、そうか。ありがと。もう一人で大丈夫だから平野くん、戻っていいよ」

「え?」

戻ることなど全く考えていなかった光俊は、舞の思いがけない言葉に驚いて、再び舞を見た。

「パスタ、食べかけだったでしょ?」

「いやいやいや。今更戻っても、もう片付けられてますって」

「そっか、ごめんね。あ、でも、まだ・・・」

しゃべろうとして、痛みがぶり返してきた舞の顔が苦痛で歪んだその時、

「京極舞さん」

と、その時受付から舞を呼ぶ声がした。

「ほら、呼ばれてますよ。俺の事は気にしなくていいですから。早く行ってください」

光俊に促され、舞は立ち上がって受付に行き、そのまま診療室へと入っていった。

「・・・」

舞の姿を見届けると光俊は目に入った自動販売機で缶コーヒーを買うと、隅っこの方の席に腰かけ、

「・・・はぁ」

と、多少の気疲れを感じ小さくため息をつくと、缶コーヒーを一口飲んだ。

「・・・」

光俊は、問診表を書く手を止めた舞の事を思い返していた。ひょっとして、まさかのホントに癌かもしれないのか?という疑問が沸々と沸いてくる。そして、ついさっき、美雪に言われた

『死にそうな人に保険かけて結婚すればいい』

という言葉が不意に脳裏を過った。

「いやいや、そういう事じゃなくって」

思わず独り言を呟く光俊。しかし、なぜ、自分は帰らずにここにいるのか、改めて自問自答し始めた。あれだけ苦しんでいた舞を一人置いて帰るのが、忍びないのか?司会の女性に何か突っ込まれるのが鬱陶しいので戻りたくないのか?だったら会場に戻らず、そのままアパートに帰ればいいじゃないか。なのに、なんで、落ち着くために缶コーヒーなんか買っちゃってここにいるのか?














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