好きって言っちゃえ
悦子と剣二がそんな話をしているとは夢にも思っていない舞は2階のスタジオで悠一と一緒に、午前中に予約の入っている赤ちゃんの撮影の準備をしていた。
「あいつら、そろそろ着いたころかな」
カメラのセットを終えると悠一は、受付カウンターで書類の用意をしている舞に歩み寄った。悠一に言われて、舞は壁にかかっている時計を見上げた。時計は9時45分を指していた。
「10時30分からの撮影だったよね。初仕事だから、緊張してるかな」
「まぁ、秀人が舞い上がって邪魔さえしなければ、問題ないとは思うけど」
「ふふっ、言えてる」
舞が笑ったその時、スタジオの入口の扉が開く音がし、二人は、にっこり笑顔で同時に大きな声を出した。
「いらっしゃいませ」