好きって言っちゃえ
京極剣二、45歳。この『京極写真館』の一応、社長だ。そう、一応。元々、写真館は剣二の7歳年下の妻、愛の父が経営していた物だ。二人姉妹の長女である愛と結婚を考えたとき、その父が出してきた結婚の条件が、『婿養子に入り、写真館を継ぐこと』だった。それが、今から16年前のこと。それまで、銀行マンだったが、
『写真館も面白そうですね』
と、次男だった剣二は『婿養子』の条件もあっさり了承し、さっさと銀行を辞め、京極家に養子に入ったのだった。それから、義父について写真の技術を1から学んだ。
元々器用でしかも凝り性、プラモデルなんかも自分なりにコツコツ作り上げてしまう剣二は、カメラを新しく始めた趣味のように楽しみながら、腕を上げていき、義父にも認められるようになってきた矢先、義父が胃癌を患っていることが判明した。昔気質で我慢強かった義父は痛いとも言わず、働き続けていたため、病院に行った時には、手の施しようのない末期となっていた。