好きって言っちゃえ

「そうね」

と、舞。

「ゲッ。『そうね』だって。ちょっと、社長〜。なんとか言ってくださいよ」

と、光俊は空になっていた剣二のグラスにビールを注ぐ。

「ははっ。まぁ、今日のところは諦めな」

剣二は光俊を軽くあしらうと注がれたビールをゴクゴクと美味しそうに咽に流し込んだ。

「はいはい。じゃあ、今日は諦めますよ。どうぞ、どうぞ絡んじゃってください」

そう言いながら光俊は、今度は舞のグラスにビールを注いだ。

「…」

とりあえず、注がれたビールを飲む舞。そして、一気に飲み干すと、

「ごちそうさまっ」

と、立ち上がり、

「お先に失礼しま〜す」

と、サッサと部屋へ出て行った。

「あれ?俺なんか、悪い事言っちゃいましたかね?」

と、光俊は剣二を見た。

「フッ。平野の方が大人な対応だったんで、自分が子供っぽく思えて居心地悪くなったんじゃないかな。ま、明日にはケロッとしてるよ、気にすんな。まぁ、飲め飲め」

笑いながら、今度は剣二が光俊のグラスにビールを注いだ。
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