好きって言っちゃえ
「あれ?もうお開きなかんじですか?」
向かいの席で話していた悠一が、席を立った舞を目で追ったのに気付いて、航が剣二を見た。
「いや、まだ大丈夫だけど。ま、明日も仕事だから、皆もテキトーにアパート戻ってもいいぞ」
「そうね。まぁ、明日は撮影は入ってないけど、仕事はあるものねぇ。遠慮せずに帰ってね」
「そしたら、ここの片づけは、会長がされるんですか?」
と、秀人。
「あら、そんなこと気にしなくて大丈夫よ。多分、明日には片付いてるから」
と、悦子。
「えっ?そんな魔法みたいなことあるんですか?」
思わず目を見開いて聞き直す秀人の言葉に、思わず口に含んだビールを吹き出しそうになった光俊は、
「バカ、あるわけないだろ」
と左手で、秀人の頭を後ろからバチッとはたいた。
「あイテっ」
「舞ちゃんが後で片づけてくれるよ」
と、剣二。
「え?舞さん、寝ちゃったんじゃないんですか?」
と、秀人。
「まだ、寝ないだろ?まだ9時半だぞ」
光俊は、掛け時計を見上げて呆れたようにそう言った。