好きって言っちゃえ
義父亡き後、剣二の裏表のない明るい人柄、悠一の優しい人となりもあり、赤ちゃんや子供の写真を定期的に撮りに来て下さるお客様も付いて、剣二が社長となった京極写真館はなんとか無事に経営を続けることが出来ていた。
だが、哲平が3歳になったころ、今度は、愛の体に異変が起こった。直ぐに病院に行き検査をした結果、奇しくも父と同じ『胃癌』と診断されたのだった。
直ぐに手術をしたが、当時27歳だった愛の癌は進行が早く、幼い哲平を残し、愛もまた胃癌でこの世を去った。
死の間際愛は、自分の死期を悟り、その時大学4年だった妹の舞(マイ)に
『自分の代わりに剣二を助けて写真館を続けてほしい』
と言い残していた。
姉の遺言を受け、仲良し姉妹だった妹の舞は、他に就職することを辞め、京極写真館に勤めることにした。