好きって言っちゃえ

それから10年が経ち、哲平が中学1年生になった頃、近くにブライダルハウスが建つこととなり、京極写真館に提携の話が舞い込んできた。
しかし、カメラマンが剣二と悠一の二人だけの京極写真館では、スタジオ写真を撮るだけで精いっぱい。とても専属でブライダルハウスに出向けるほどの人手が足りなかった。
考えあぐねている剣二を見て、義母の悦子(エツコ)が、家族会議を提案してきた。
その日の夕食後、改めて悦子によって台所のテーブルに集められた剣二、舞、哲平。皆が揃うと、悦子は、1通の貯金通帳をテーブルに置いた。

「これ、お父さんが亡くなった時の保険金」

「保険金?そんなのあったんだ」

と、舞。

「まぁね。幸このお金を使わなくてもあんたの大学の学費も払い終えられたから、使わずに済んだから、いつか、この写真館を立て直すときに使えたらって思ってたんだけど」

「ど?」
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