好きって言っちゃえ
その頃、ブライダルハウスでは白無垢の着替えが出来たばかりの新婦を光俊を助手にして、航が撮影している姿を剣二が見守っていた。
「あ、お義兄さんっ」
その後ろをたまたま美雪が通りかかり、剣二に声をかけて立ち止まった。
「ああ、美雪ちゃん。久しぶり」
美雪は舞の友達なので良く京極写真館にも遊びに来ており、剣二とも、前々から顔見知りである。
「あ、社長って呼ばなきゃいけなかったですね」
「ははっ。ま、取って付けた肩書なんで、俺も社長だって、忘れてるときあるくらいだから、なんだっていいよ」
「でも、一応取引先の社長ですから」
「ははっ、一応ね」
「あ、いえっ、そういう意味じゃっ」
「それより、どう?あの二人、ちゃんとやってる?」
剣二は新郎新婦と和やかに撮影をしている光俊と航の方を顎で示したので、美雪も二人の方を見た。
「ええ、やってくれてますよ。出来上がりも評判いいんですけど」
「ですけど?」
「意外にも、平野くんの新郎さんウケがいいんですよね」
「新郎さんウケ?」
「そうなんです。西尾くんはほら、ちょっとクールな感じで職人肌っぽく手際よく撮影していくんで、新婦さんが疲れないうちに撮影が終わるんでそれも評判良いんですけど。平野くんの場合は、あんなチャラそうなのに、ほら、基本、新郎さんにしか話しかけないんですよね」
見ると、確かに光俊は新郎にばかり話しかけては二人で笑っている。
「それで、結構こういう堅苦しい型物の撮影は嫌がる新郎さんもいらっしゃるし、全然笑わない新郎さんもいらっしゃるんですけど、ここの撮影ってほぼ100%の新郎さんが笑ってるんですよね。で、新郎さんが機嫌がいいから、新婦さんもリラックスして笑顔が出るっているっていういい循環なんです」
「なるほど。じゃ、二人いいコンビなわけだ」
「はい」
「ありがと。安心したよ」