好きって言っちゃえ
「じゃ、俺、社長迎えに行ってきます」
「行ってらっしゃい。事故らないようにね」
赤ちゃんの撮影が終わったので、長岡は悦子に見送られて剣二を迎えに車で出て行った。
秀人が出て行くと、入れ替わりに2階から降りてきた舞が赤ちゃんの貸衣装の着物を持ってやって来た。
「母さん、これ、洗っといてよ」
「会長でしょ」
「…。会長、これ、洗ってください」
「どうしたの?」
「ミルク吐いちゃって。よだれかけだけじゃなくて、着物まで汚れちゃった」
「あ〜。たまには、自分で洗いなさいよ」
「ええっ?こういうの会長の仕事でしょ?」
「何言ってんの。普通こういう雑用は平社員の仕事でしょ」
「ええ〜」
「あんたね、たまにはこういうことした方がいいわよ。女らしさが無いのよあんたは」
「そういう問題じゃないでしょ」
「いや、そういう問題よ。化粧っ気もないし、ズボンばっかり履いてるから、男の中に座っててもパッと見、どこにいるかわかんないんだから」
「化粧はしてます〜」
「してその程度じゃあね〜」
と、二人が親子喧嘩していると、お店のドアが開いて一人の20代後半っぽい女性が入って来た。
「いらっしゃいませ〜」
二人はパッと正面を向いて、満面の笑みを女性に向けた。
「あの…、写真を撮っていただきたいんですが」
薄いピンク色のワンピースを着たその女性は少し恥ずかしそうにそう告げた。