好きって言っちゃえ
「証明写真ですか?」
と、舞。
「あ、いえ…」
言い難そうにする女性を不審な顔で見る舞を押しのけて、悦子が大仰な笑顔で対応を始めた。
「はいはい、撮影ですねっ。あちらにエレベーターがありますので、それで2階にお上がり下さい。上にカメラマンおりますので。どうぞ、どうぞ」
「あ、はい…」
女性は軽く会釈をしてエレベーターホールの方へ行った。女性が向かったのを見届けると悦子は急いでまだ2階のスタジオにいる悠一に内線を入れた。
「あ、チーフ、今、女性がお見合い写真写しに来られたから、宜しく頼むわね」
「え?お見合い写真?」
舞がびっくりしているうちに、悦子が電話を切った。
「あんた、絶対上がっちゃだめよ」
「え?なんでよ。受付とか手伝った方が…」
「ああ〜、ダメダメダメ。あんたみたいなガサツな女が立ち会ってたら、彼女、笑顔も出ないでしょ」
「ガサツなって…」
「悠ちゃんに任せておきなさい」
「…は〜い」
「あ、でも、悠ちゃんのことが気になるんだったら、そっと隙間から見ててもいいわよ」
「は?それどういう意味?」
「は〜。どういう意味かもわかんないなら、さっさと着物洗ってきなさいっ」
と、悦子は舞のお尻をバシッと叩いた。
「イタっ!何よもう〜。どっちがガサツよ」
ぶちぶち言いながら舞は着物を持って店を出て自宅のある3階へ向かった。