好きって言っちゃえ
悠一はもう一度生年月日に目をやる。自分の誕生日から計算して、6歳下だということが分かる。と言うことは、航と同じ、今年で30歳だ。
「何言ってるんですか。桃子さんが生まれてきた日なんですから、めでたいですよ」
「え?」
予想外の悠一の言葉に再び悠一の顔を見上げる桃子。そこには目を細めて笑う悠一の笑顔がある。
「桃子さんが、皆に見せたくなるような、可愛い写真撮りますから、任せておいてください」
「…はい」
「どうぞ、こちらに」
悠一はカウンターから出て桃子をバック紙の方に誘導した。
桃子は最初は緊張の面持ちだったが、終始穏やかでにこやかな悠一にだんだん感化され、自然と笑顔になっていく。そしてその様子そっと覗きに来た目があった。
「…ふ〜ん」
それは、赤ちゃんの着物を洗い終えた舞だ。
「…で?のぞき見することに何の意味があるわけ?」
首を傾げながら、舞は後ろの後ろ作業場の自分の机に戻って行った。