好きって言っちゃえ

そう言うわけで、仕事を終えると、まだ部活から帰宅していない哲平以外、京極写真館のメンバーは、歓迎会の時の座り順で京極家の居間で食事をしている。

「今から、運動するんだからビールってわけにはいかないけど、料理はたくさんあるから、遠慮なく食べて頂戴ね」

と、悦子が機嫌良く料理をすすめる。

「はい、遠慮なく」

悦子の言葉に乗じて、光俊の端が大皿のおかずに伸びる。

「こんなにたくさん作ってもらって、ほんとに毎週いいんですか?」

恐縮しながら航が悦子を見る。

「何遠慮してるのよ。たまには皆でこうやってワイワイ食べるのは私も楽しいのよ」

「そうですか?でも、仕事終わってからこんな量の食事作るの大変ですよね?」

「それもまた楽しいのよ。西尾くんは料理するの?」

「はい。俺は料理するの好きなんで休みの日にはたまにチャーシュー煮込んだりしてます」

「あら、すごいわね」

「あ、今度持って来ますよ」

「まぁ、楽しみにしてるわ。ちょっと、舞も少しは見習いなさい」

「は?」

急に話の矛先が飛んできて思わず端を止める舞。

「舞さんは料理しないんですか?」

航は前傾姿勢で、一番席の離れている舞の顔を見る。すると、舞が答える前に悦子が舞を指さして答えた。

「この人は食べる専門」

「そりゃマズイっしょ。いい歳なんっすから」

光俊がニヤッと横目で隣に座っている舞を見た。

「でしょ。もっと、言ってやって頂戴。そんなことじゃ嫁の貰い手もないって」

「嫁には行かないからいいんですっ」

航の視線も光俊の視線も無視して黙々と食べる舞。

「あ、そう言えば片岡さんが舞さんは『結婚しない主義』だって言ってましたね」

と、光俊。

「…余計なことを」

ため息交じりに呟いた舞を見て、最早半笑いの光俊。

「なんか、過去にこっぴどく振られたとか?」




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