好きって言っちゃえ
航の運転で体育館に着いた5人は、受付の人にチケットを渡して、早速中に入り込む。
「体育館に5人って、流石に広く感じますね。ネット張りますか?」
と、航。
「いや、ネットはまだ早いだろ。 とりあえず輪になって、ちゃんとパスできるようになるのが先だな」
と、悠一。
「そうっすね。この前グダグダでしたからね」
「じゃ、僕ボール取ってきますっ!」
長岡がダッシュで奥の倉庫へ行き、バレーボールを1つ取って戻って来た。
「始める前に、チーフにちょっとパスの仕方習った方が良くないですか?」
と言ったのは航。
「あ、僕が教えましょうか?」
と、持ってきたボールをポンポンつきながら秀人。
「陸上部は黙っとけ」
「…はい」
光俊の一言で、秀人がシュンとなったところで、悠一が秀人からボールを受け取り、実演しながら教え始めた。
「まず、オーバーハンドは、おでこの上でハの字に手を開いて膝のバネを使いながら、こう、指でボールをはじき出す感じかな」
悠一の言うとおりに他の4人はエアーでやってみる。
「あ〜、西尾、脇開きすぎ。平野は、もうちょっと、手をおでこに近づけて。そうそう、そんな感じ。舞ちゃんは……」
なかなか自分には指摘しない悠一に、自分は直すところがないのだと、得意気にエアーを続けていた舞だったが、
「……阿波踊りみたいだね」
の一言で、正に、阿波踊りのように腕を上げたポーズで固まった。
「ちょっと、舞さんっ!真面目にやってくださいよ〜っ」
爆笑しつつ、空かさず突っ込む光俊。
「至って真面目にやってますっ」
腕を下しムッとする舞。
「ごめん、ごめん。言い過ぎたね。もうちょっと、手をおでこに近づけて、こう手の間隔を狭くして、脇を閉めて」
と、悠一は舞の腕を持ってフォームを強制していく。
「おっ、チーフずるいっすよ。舞さんだけ手取り足取りっすかぁ」
ニヤニヤしながら悪い顔で光俊が冷やかした。
「あ、いや、別に…」
光俊の思いがけない言葉にドギマギして悠一はパッと舞の腕から手を放した。
「じゃ、平野さんには僕が手取り足取り…」
と、秀人が光俊の腕を取ろうとして、
「なんでだよっ」
と払いのけられるのであった。