好きって言っちゃえ
「え?じゃ、本気で参加しろと?」
「本気かどうかは本人の気持ち次第だけど、結婚してたりとか、彼女がいたりするのは絶対ダメなの」
「で、俺たちに白羽の矢が立ったわけか」
「それにこれ、30代限定のパーティーなのよ。だから、長岡くんには頼めないでしょ」
「じゃ、チーフは?」
「この日は赤ちゃんの撮影が入ってて、悠一さんはダメなんだって」
「ほほ〜、リサーチ済みってことですか」
コーヒーに手を伸ばす光俊。
「まぁね」
「ってことは、俺たちがその日、仕事抜けてこのパーティーに参加するってのはもう、社長の了解も取ってある?」
「ははっ。その通りです」
「じゃ、最早、お願いじゃなくて、業務命令ですね」
と、航もコーヒー手に取った。
「仕事抜けて行ってもらうんで、もちろん社長の了解は取ったけど、参加するかどうかは二人に任せるから、直接話してくれって言われたの」
「サクラじゃないから?」
「そう。ねっ、お願い。参加して頂戴っ」
美雪は再び手を合わせた。
「でも、俺、結婚する気ないっすからね〜」
と光俊は『結婚したいあなたへ』をコツコツと指で叩いた。
「そこはいいのよ、言わなければわかんない事なんだから。それにかわいい子がいたら気が変わるかもよ。もちろん参加料はうちの経費で払わせてもらうから、ねっ」
「でもなぁ〜」
と、光俊が渋った時、航がチラシを見て言った。
「あ、平野さん、ビュッフェスタイルの昼食付きって書いてありますよ」
「参加させていただきます」
瞬時に頭を下げる光俊なのであった。