好きって言っちゃえ
仕事着のスーツより少しおしゃれなジャケットを羽織って、光俊と航はパーティー会場であるイタリアンレストランにやって来た。貸し切りパーティーなので、集まっている男女は黒スーツのスタッフ以外は、全員参加者だ。
2人は入口の受付でナンバー入りの名札を渡された。光俊が19番、航が20番。今日のパーティーは男女20人ずつ。
「名札は必ず胸につけてくださいね」
名札を手に持ったまま中に入ろうとして、40代らしき受付の女性の強めに言われ、二人は立ち止まって、名札を付けてから会場の中へ入った。入ると、席札に名札のナンバーが書かれた物が置いてある丸テーブルがまるで披露宴会場のようにセッティングされており、中に入っている人はすでにそれぞれの席に着席している。
「いらっしゃいま…あっ平野くん」
会場の入り口で入って来た人を席に案内していたのはいつもの黒スーツを着た美雪だった。
「おお、片岡さん」
「こんにちは」
光俊の後ろから入って来た航も美雪に挨拶をした。
「…」
「ん?どうしたんっすか?」
航を見て無言になった美雪の顔を覗ききこむ光俊。
「ん?あ、いや、いつものスーツと違って、西尾くんかっこいいなと思って、つい見とれちゃった」
思わず正直に言ってしまう美雪。
「ありがとうごさいますっ」
まさか美雪の本心だとは思わず、軽く笑顔で受け流す航。
「あれ、俺の立場は?」
「あ〜、平野くんもかっこいいじゃん。やる気ない割には、ちゃんとオシャレして来てくれて、ありがと」
「なんか、納得いかないっすね〜」