ビタージャムメモリ
「ずいぶんなつかれてるじゃない」
「そう見えた…?」
憔悴しきった私の背中を、早絵がぽんと叩いてくれた。
終電の近い駅までとぼとぼと歩くうち、再び悲しさが込み上げてくる。
何もあそこまで言わなくても。
うじうじ、暗い、はっきりしない。
恋に恋してる、なんだかんだ自分に甘い、堅い。
おまけに彼曰く。
『処女くさい』
もう何をどう落ち込めばいいのやら。
「しかし、ボーイって意外と客の話聞いてるのね、気をつけよ」
「歩くんは、私に恨みでもあるのかな…」
「いやいや、逆でしょ、弓生、気に入られてんだよ」
あれで?
「妻子持ちかもしれない一回り上の男より、確実な年下って神様が言ってるのかもよー」
「やめて」
私は精も根も尽き果て、部屋に戻ると、やっとのことでメイクだけ落として、眠りに落ちた。
* * *
「技術発表会ねー」
「会場を借りて、メディアさんを呼んで、開発者から直接プレゼンをするんです」
「自動車でもないのに、大仰すぎやしない?」
「車メーカーも、華やかな新車発表会の他に、技術だけの発表会をしていたりします。広く一律に情報を届けるには、これしかないと」
「そんな予算持ってないよ」
そんな。
広報部長のおざなりな態度に悲しくなった。