ビタージャムメモリ
その答えは、さらりとしたものだったけれど。
きっと先生の、大原則のようなものなんだろうと感じた。
「あの、私はこういうのって、やれば成功するってものでもなくて、やっぱり必要だと思うんです、その、カリスマと言いますか」
「カリスマ?」
「…アイコンとなる、求心力のある人が。眞下さんは、それなんだと思います、だからやりたいというか、やるべきだと、個人的には」
私は、これ以上ないくらいの本心を言ったまでなんだけど。
実際、先生に会ったメディアの人々が、彼の人柄に惚れ込んで帰っていくのを目の当たりにしていたから。
先生にはそういう力があるんだと、言いたかったんだけど。
それまでの話の流れのせいで、私がさっきのお返しに、ほめ殺してやろうとしているのだと捉えられたらしい。
先生は明らかに信じていない顔で、そうですか、と言い。
「光栄ですね」
いたずらっぽく、眉を上げて微笑んだ。
その手には乗らないぞ、とおかしそうな瞳が言っている。
先生、先生。
私の前で、そんな初めての表情、見せないで。
ドキドキしすぎて私、何か変なことを口走りそうです。
「それじゃ、また」
「あっ…」
眼鏡を直す手を一瞬止めて、何か、と先生が振り返る。
いえ、なんでも、とごまかした。
ドアが閉まるとすぐに、活発な議論の声が聞こえてくる。
私は先生の、すらりとした左手の指に。
何も飾りがなかったのを、思い出していた。
きっと先生の、大原則のようなものなんだろうと感じた。
「あの、私はこういうのって、やれば成功するってものでもなくて、やっぱり必要だと思うんです、その、カリスマと言いますか」
「カリスマ?」
「…アイコンとなる、求心力のある人が。眞下さんは、それなんだと思います、だからやりたいというか、やるべきだと、個人的には」
私は、これ以上ないくらいの本心を言ったまでなんだけど。
実際、先生に会ったメディアの人々が、彼の人柄に惚れ込んで帰っていくのを目の当たりにしていたから。
先生にはそういう力があるんだと、言いたかったんだけど。
それまでの話の流れのせいで、私がさっきのお返しに、ほめ殺してやろうとしているのだと捉えられたらしい。
先生は明らかに信じていない顔で、そうですか、と言い。
「光栄ですね」
いたずらっぽく、眉を上げて微笑んだ。
その手には乗らないぞ、とおかしそうな瞳が言っている。
先生、先生。
私の前で、そんな初めての表情、見せないで。
ドキドキしすぎて私、何か変なことを口走りそうです。
「それじゃ、また」
「あっ…」
眼鏡を直す手を一瞬止めて、何か、と先生が振り返る。
いえ、なんでも、とごまかした。
ドアが閉まるとすぐに、活発な議論の声が聞こえてくる。
私は先生の、すらりとした左手の指に。
何も飾りがなかったのを、思い出していた。